15/06/12
その昔予備校に通ってた頃の後輩にタケ(仮名)って奴がいて、その後も何だかんだで繋がってて、年に数回飲みに行く関係だった。
ただ、2年ほど前に向こうの親が死んで状況が変わったり、俺の方も親が病気だの手術だのとゴタゴタしていて、メールと年賀状だけで会わない期間がちょっとあった。
で、先日、そのタケから久々に連絡が来た。
「彼女に振られたり無職になったりで精神的にヤバいんで、気晴らしに飲みませんか?」
と。
特に予定もなかったので承諾して、いつも通りタケのアパートの近くの駅で待ち合わせをした。
その日、久々に見たタケはゲッソリやつれていて、一目で
「あ、こいつヤベェ」
って思うくらい様子が変わっていた。
身長185cmくらいあるんだが、以前は80kg近かった体重が50kg台に落ちたと言っていた。
それだけじゃなく、挙動もおかしく、周囲をキョロキョロ見たり、いきなり後ろを振り返ったりと、何かを警戒している様子がみえた。
いつもの様に、駅前の昼から飲める店でまず一杯引っ掛けて、その後コンビニでビールその他を買い足して行こうという話になり、いつもの店に入った。
話は元カノのことが中心で、同じ職場に勤める女性と付き合いだしたんだが、彼女が嘘をついてばかりで、しかも職場内でも自分の嘘を広めて、自分がまるで彼女に付きまとうストーカーのような扱いを受けて、職場にいられなくなり仕事をやめて、今は彼女とも別れて無職になった。
しかもその後、彼女が俺に再就職をさせないために、監視させている。
…というどこまで本当なのかわからないような話で、その間もキョロキョロ周囲を見たり、いきなり黙り込んだりととにかく言動がおかしかった。
何となく、以前職場にいた元アル中で鬱病のオッサンを思い出させる挙動が多く、とりあえず心療内科を勧めてみたんだが
「そこはもう手配されているから」
と意味のわからない断られ方をした。
深入りしないほうが…という気持ちもあったものの、話を聞いてやったら少しでも気持ちが落ち着くんじゃないか、などと思ってしまった。多分これが悪かった。ここで適当に切ればよかったんだ。
その後、タケが
「ここヤバくなってきた」
と言い出したので、店を出た。
大通りに面した交差点で信号待ちをしている時にタケが突然言い出した。
「ここ、妙に人が多いと思いません?」
「ああ。そういえば平日の昼間なのに人が多いなあ」
見ると、信号機の向こう側には花壇の花の入れ替えをする業者が数人いて、さらに身体障害者とその付き添いのような人の集団20人くらいがいた。
「まあ、でもそういうこともあるんじゃないの」
と軽く流そうとしたんだけど
「いつもですよ。俺がここを通る時はいつもこれなんですよ」
とうつむいたままつぶやいた。
しばらく道を歩いていると
「ここの先の道路見ててください。〇〇運送の車が通りますから。そいつも仲間なんですよ」
と言い出した。
何言ってんだ、と笑おうとした瞬間、目の前の道を〇〇運送の車が横切った。一瞬背筋が冷たくなった。
「ほらね。いつもなんですよ」
タケの部屋について飲み始めようかという頃にまた。
「ピアノです。俺が家に帰ったら合図するんですよ。ピアノですよ」
と言い出した。
正直半信半疑だったんだけど、ビールやアテを準備していると、突然どこからともなくピアノの音がしだした。
「ほらね。いつもなんですよ。俺の頭がおかしいと思ったでしょ?俺もそう思いましたよ。そんなことあるわけないって。だって普通に考えたらおかしいじゃないですか。
でもね、実際そういうことが積み重なってくると、俺の勘違いじゃないってわかってきたんですよ。
俺、怖くて引っ越そうと思って駅前の不動産屋にいったら、今度はすぐ隣の店が工事して会話も聞き取れないんですよ。そこまでして俺をここから逃さないようにしようとしてるんですよ、彼女は…」
涙流しながらタケが訴えてきて、俺は正直、今まで起きたこととタケの異常な言動とで物凄く混乱した。
一応ネタバレをするけど、タケは完全に頭がイッていた。
家に帰ってから調べてみると、あの交差点から少し離れたところに養護学校があり、障害者が通学や散歩なんかでよく利用するのは当たり前のこと。
また、グーグルマップで調べたところ、運送会社のトラックが通った道は、奥に数軒の民家があるだけで、その奥は広い運送会社のトラックターミナルのようなものになっていた。
だからその道をその運送会社のトラックが通る確率はかなり高い。
ピアノ教室も同じくマップで調べてみたところ、タケのアパートの2軒ほど離れた民家に『〇〇ピアノ教室』という表示があったため、平日の昼間(夕方)に小学生が学校帰りなどに習い事として通っていただけだと推測される。
全部が合理的な説明がつく。
ただ、この前近所のスーパーに買い物にいこうとして交差点で信号待ちをしていた時、ふと道の向こう側をみると、花壇の花の入れ替えをする業者と、障害者とその付き添いのような20人くらの団体をみて心臓が跳ね上がるほどびっくりした。
偶然だろ、と思ったんだが、その時目の前の交差点を〇〇運送のトラックが通り過ぎて身動きが取れなくなった。
ヤバイ、これ何かヤバイ、という気持ちが湧いてきて、スーパーに入って最低限の買い物をして、部屋に帰って冷蔵庫に買ったものをいれていると、なぜか突然ピアノの曲が流れてきたんだよ。
偶然だと思うんだが、このマンションに引っ越して3年だが、一度もピアノの曲なんて聴いたことないぞ?
何で?冗談だろ?と思う気持ちと、もしかして幻聴?俺は頭がおかしくなったのか?と思う気持ちと今も正直かなり混乱してる。
俺の頭がおかしくなったのかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。正解が未だにわからない。とりあえず電話で心療内科の予約はとった。
それくらいの判断力は残ってる自分にホッとしてる。
148: 名無し\(^o^)/ ID:Mic9/+Si4Q.net
ほんのりと怖い話スレ その109
コメント
コメント一覧 (19)
自分で起こせる範囲内で起こしてるわけだが現実的に言えばそんな能力は超常現象のたぐいだからありえない非現実なわけだからなwそのうち全てに干渉して悪化して精神崩壊していくだろうなぁ。
Twitterやら何やらで晒されてて密かに笑い者にされてるんじゃ…みたいな。
蛇足
なんと言うか、考え方や意識の持ちようが共鳴する感じ
鬱も同じ
鬱の人と一緒にいると、似たような悲観的な思考になる
ムカシノヒトモイッテイル “”トモダチハエラベ“” ハ、コウイウコトカモ
精神を病んでいる、社会的弱者を痛めつける最低な行為です。
人間のゴミ以下です。
彼らの主張の多くを見ると、すべて日常的に自分の周囲で起きていることを、「自分を監視している」「狙っている」と思い込んでどんどん妄想に引きずり込まれるの。
そしてね、恐ろしいところは、聞いた側に伝染すること。
この話で言うなら、花の手入れ業者、養護学校の生徒、運送会社のトラックにピアノの音、全部普段からあるけど、ただ投稿者が気が付いていないだけ。
それが糖質のフィルターを知ってしまってからだと、初めての経験のように錯覚するの。そうして病んでいくの。
気にしないのが一番だな。
レインコートとか歯車みたいな逃げ場のなさが怖い
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