怪しい男

10/09/07
これは去年の話。横浜にあるキャバクラのヘアメイクをしていて、その時聞いた話なんだ。

キャバクラで働く女の子(仮にAさん)におきた本当の話。

Aさんは20歳になったばかりで、大学に通いながらキャバクラで働いてるという、よくいる女子大生キャバ嬢だった。

「最近、ウザイ客につきまとわれてるから、やめよっかな~」

よくある事だと思った。

お店の子達は、お店側(ボーイさん)でもお客でもないヘアメイクには、話がしやすいようで、女の子の愚痴や相談ごとなどはよく聞いていた。

Aさんの話を聞くと、先輩キャバ嬢を指名してきている社長さんの部下にAさんがついていて、その人が粘着質なお客だということだった。

粘着質なお客はよくいるらしい。ただ、

「ありえないんだよ。」

とAさんは言っていた。

ボーイさんにも相談したそうだが、自分が管理できないのが悪いと言われ、真剣に聞いてもらえなかったそうだ。



それから2日くらい後。Aさんが店長と言い争いながら、泣いているのを目撃した。

その後、メイクを直し、髪型をどうするか聞いている間も、いつもの明るさもなく別人のようだった。

その時聞いた彼女の話によると。

2日前に家に帰ると、玄関のドアノブに袋がかかっていて、その中に、男性の局部の写真とプーさんのぬいぐるみが入っていたそうだ。

そして、プーさんのぬいぐるみのおなかの辺りが裂けていて、その中から精子らしい液体が流れ出ていたとのことだった。直感的に、その粘着質のお客だと思ったとのことだった。

そして昨日、休みだったAさんは友達と買い物に行く約束をしていて、駐車場に停めてあった車に乗ろうとすると、また、同じ紙袋に、今度はAさんの下着が入っていたそうだ。

その下着の中に、ぐちゃぐちゃになったAさんの写真と、今度は血まみれになったカミソリがはいっていたということだった。

「もうやめるから、これが最後になるかもね~」

Aさんのメイクをしたのはその日が最後だった。

次の日、自宅で自殺していたAさんを発見したのは、新人のボーイさんだった。

出勤確認の電話に出ないAさんを心配した店長さんが、そのボーイさんに寮まで迎えに行かせたところ、ドアノブで首を吊ったAさんを発見したということだった。

身近でしかも、ほぼ毎日会っていた子が突然亡くなるのは、なんともいえない感じだった。

葬式の後、店長さんから飲み会の席で話を聞く機会があった。

店長さんが言うには、そんな客はいなかったということだった。そして、Aさんは時々ありもしない話をしていたそうだ。

「よくあることだよ…。」

といっていたのがとても印象的だった。

ただ、その1週後。

店長さんが逮捕された。亡くなったAさんのお腹の中には店長さんとの子供ができていたそうだ。

店長さんには結婚を前提に交際してる人がいて、Aさんとは子供の件で激しくもめて、どうしようもなく絞殺してしまったとの事だった。

そして、怖くなって、自殺に見せかけて誰かに発見してもらう。とっさに思いついた筋書きだったそうだ。

「よくあることだよ…」

店長さんが言っていたのを思い出すと、涙があふれてくる。

それから、ぬいぐるみ、精液、カミソリ、血、写真、Aさんが話していた言葉には、何かメッセージがあったんだなと今は思っている…。