紅梅

17/02/05
今は受験生を抱えた奥様方も多いかな?

私の高校受験の時、祖母が年明けから持病が悪くなって入院していた。
私は受験を控えているので、お見舞いなど行ったら逆に祖母が心配する。

「まずは合格だけを考えていなさい」

と言われていた。

とても可愛がってくれた祖母だったので

「合格したらその日のうちに病院に行こう」

「庭の紅梅の木、合格発表の頃にはちょうど咲いているだろう」

「祖母はこの紅梅が好きだから、木には悪いけど何本か折って持っていこう」

「サクラサクじゃなくて、梅が咲く、だね!」

とそれを支えに勉強頑張った。

(サクラサク(桜咲く)は、昭和の、合格を知らせる電報の定型文。
合格発表は、学内の大きな掲示板に合格した番号が貼り出されるので見に行く)

受験の日、母に送られて玄関を出て、門を出たところで、ふいに

「(私)ちゃん!」

と呼ばれた。

それも、高いところから、右から左に横切って行くような声で。

「えっ」

と思ってあたりを見回しても、誰もいない。

母ももう家の中に入っていて、門も玄関も閉まっている。



「空耳?神経が張っておかしくなってるのかな?」

とそのまま試験に行った。

その年は寒くて、合格発表の日、朝に庭に出てみると、
紅梅はまだ2,3輪しか咲いてなかった。

「でもいいや、一番咲きの花を届けるよ!」

と発表を見に行くと、合格していた。

学校に報告に行き、友達と喜び合い、それから

「やったー!おばあちゃん、紅梅持っていくからね!」

と踊るように走って帰ってくると、玄関を開けた途端、
近所に住んでいる叔母が泣きながら出てきて

「おばあちゃんが……」

生まれて初めて、腰を抜かした。

祖母は私の受験の日から意識不明になり、合格発表の日、
私が出かけた直後に病院から連絡があり、両親と叔母夫妻が
駆けつけて最期を看取ったそうだ。

親戚がみな

「合格おめでとうね。おばあちゃんも気にしてたからね。
(私)ちゃんが合格するのを見届けて安心したんだね」

と言ってくれた。

少しだけ咲いた紅梅の枝を折って、お棺に入れた。

受験の日に聞いた声は、祖母が空を駆けて励ましに来てくれたんだと思う。
家の近所で紅梅が咲き始めたので思い出したわ。


949 :名無しさん@おーぷん  ID:nKU
【チラシより】カレンダーの裏 16□【大きめ】