11/07/26
彼女と家にいたら、突然うちのドアを激しく叩かれる音が聞こえた。

どうせ同じアパートに住む友人のいつものイタズラだろうと、ろくに確認もせずにドアを開けると、タンクトップのがたいのいい黒人がいた。手にナイフを持っていた。

一瞬、ヤバいやつだ、と思ったが混乱してしまい、なにもできなかった。

しかし、よく見ると様子がおかしい。焦っているのは相手の方。肩で息をしており、汗だくだった。

英語で何かまくし立てるが、俺にはよくわからない。相手はおかまいなしで、わめいている。

そのうち、奥に隠れて様子を見ていた彼女が出てきて、男と話を始めた。彼女は留学経験があり、日常英会話程度なら不自由しない。

俺はしばらく話を伺っていたが、しびれを切らして、彼女に通訳を頼んだ。



男は1つ先の駅のバーで働いていたらしい。仕事帰りに街をうろついていたところ、1人の日本人女性と知り合い、そのまま行きずりで、女の家に上がったらしい。

女の家で一杯やっていると、ふと女は奥の部屋に消えた。男は女を待っていた。そのうち、風呂場からなにか物音がするのに気がついた。

何気なく風呂場を覗くと、そこにはさっきの女とは別の、顔がきずだらけで片腕がヒジまでしかない女が、空の浴槽にうずくまって体を揺らしていた。

女は男に気づき、何か怒鳴った。口の中が血だらけだった。突然何か、肩の横をかすめた。ナイフだった。

男は恐怖におののき、なぜかそのナイフを拾うと、そのまま部屋から逃げ出した。女は追いかけてきたが、全力で走り、どのくらい走ったかわからないが、途中、目に入った俺の部屋に助けを求めたという。

彼女が警察に行くよう進めたが、男はそれはダメだと頑なに断った。

大袈裟なジェスチャーで気づいたが、男の肩には確かに新しい深めの切り傷があった。

俺たちは半信半疑だったが、男を放って置くわけにもいかず、タクシーを呼んで、男を乗せた。

朝まで明るくて、人がいる場所がいいというので、少し遠くにあるが、朝までやっているファミレスを行き先にと、運転手に伝えた。男がそのあとどうしたのかは知らない。

彼女が言うには、男は動転していたが、話ぶりからは酔っているようではなかったとか。また、視線もまともでクスリでキマッたやつ特有の目もしていなかったとか。

別に俺の家に上げろとか変な要求をしてくることもなかった。ただ、明るいところを教えてくれと。


以上
信じられるかどうかわからんが、とにかくこの間あった変な出来事。気持ち悪いから、どこの家だとか詮索する気もない。