階段

03/01/16
26年間生きていて1番恐かった体験を書きます。

僕は4年前に入社して以来、2年間社員寮で暮らしていました。

そこは社員寮とは言っても、70年代風の普通の一軒家で、同僚のYが一緒に住んでいる以外は寮長もいない住まいでした。

仕事は24時間、3交代ですが、新人の半年間は夜勤をやらせてもらえません。話は、半年後に初めて夜勤をやったときのことです。

その日、僕は身体がくたくたになり寮で泥のように眠りました。

目が覚めたとき、昼前だったと思いますが、やけに耳ざわりな音で目が覚めました。頭がはっきりしてくると、それは声であることがわかります。

「ブッ殺すぞ!」

「ブッ殺すぞ!」

「ブッ殺すぞ!」

「殺してやる!」

「ブッ殺すぞ!」

絶叫する声。隣の家からです。



子供の声とも老婆の声とも判別がつきませんでしたが、とにかくすごい剣幕なのです。壁などを手当たりしだい叩きまくる音もします。キチじみた人が隣に住んでるんだと思い、憂鬱になりました。

次の日、会社でこの話をしたところ、有名らしく、以前この寮に住んでいた先輩も

「ああ、隣に住んでる人ね、ちょっとおかしいんだよ。そのうち慣れるから」

といっていました。確かにそれから数ヶ月は気にせずに過ごせたのですが…

ある夜、昼間の勤務を終えて寝ようとしていたところに例の

「ブッ殺すぞ!」

という声が聞こえてきました。

こんな夜遅くにまで!さすがに腹が立ちそうになったのですが、ちょっとおかしい。声が寮のすぐ外から聞こえる気がする。

そもそも、ブッ殺すって、誰を。

そう考えると背筋が寒くなるのがわかりましたが

「自分のはずがない」

と言い聞かせ、その日は寝てしまいました。

それから数日間、隣の家は静かでした。その日も僕は仕事から帰り、寮の鍵を開けて、玄関に入りました。

すぐに服を着替え、風呂に入る。疲れが体から抜けていきます。風呂から上がって、2階の自分の部屋に戻ろうと階段をのぼった、そのときでした。

視界の端に、後ろから階段をのぼってくる人影が見えたのです。

「ああ、Yか」

しかし、それは違うことにすぐに気がつきました。Yはそのとき夜勤で、今は会社にいるはずだからです。背筋に冷たいものが走ります。じゃあ、誰なんだ?

僕が振り向くか振り向かないかの次の瞬間

「ブッ殺すぞ!!!!!!」

そこには、いつも隣の家で叫んでるあいつがいたのです。僕は前身の毛が逆立ったのを憶えています。

子供とも老婆ともつかない声のそいつは、容姿も子供のような老婆のようで、目は見開き、鼻はつぶれ、口は曲がり、とてもこの世のものとは思えませんでした。

だいたい、いつから、どうやってここに入ってきのか。混乱している僕に向かってそいつは突進してきました。手には得体の知れないものを持ってます。僕は必死の思いで

「誰だてめーは!!」

と叫ぶと、そいつは急に驚いたように玄関から逃げていきました。そしてそいつの去ったあとには、●のような臭いのする足跡が残されていました。

その後警察を呼び、二度とこういうことはありませんでしたが、本当に最悪な出来事でした。

今はその寮も後輩が使っていますが、いまだに階段をのぼるとき、誰かが後ろから追いかけてくる気がして恐くなります。